忘れていた水伝関連

田崎さん@学習院「「水からの伝言」を信じないで下さい」のリンクを今更はってみる。

水伝に関しては前に殴り書きをしたんですが、今日は以下の一文を勝手に差し上げたいなと。

もしわれわれがみずからの行為を完全に倫理的に正しいと自認するようなら、それはまったくモラル的ではありません。みずからの行為を正当化することがモラルの問題ではないのです。モラルはイデオロギーではない。自分に対して倫理的に正しいという判断をあらかじめもってしまっていることほど、モラルとして醜いことはありません。そうではなくて、みずからの行為が正当であるかどうかの保証がなく、確固とした判断基準もないところで、しかしみずからを基準にするのではなく、あくまでも他者を基準にしてみずからの行為を考えようとすることこそがモラルです。
他者に時間を与えようとすること、
他者にコミュニケーションのための言葉を与えようとすること、
他者にその未来への「開け」を与えようとすること、
つまり、他者に希望を与えようとすること。

from

知のモラル

知のモラル

 pp.14-15

あと孫引きですが

たとえ敵対者同士であっても、その2人の人間の間に対話が成立するためには、共通の土俵が、今の場合、真理に対する共通の敬意が前提とされるものだ。

from P. ヴィダル=ナケ『記憶の暗殺者たち』(石田靖夫訳、人文書院、1995) pp. 9-10

というのが樋口陽一『「知」の賢慮に向けて』という論文に書いてあったりでして、再読しなきゃいかんなあと思ったわけなのですが。
要は理系だ文系だ言う前に、そこに真理に対する共通の敬意が存在しているかということであったりするのではないかと。
自分の主張したいものとか信じているものをあえてそこで括弧に入れること、しなやかにそれを「避ける」ことができるのかどうかという点に敬意っていうのがあるんじゃないかとふと思ったり。

ただビリーバーとの対話というのはファンタジーでしかないのかもしれないと暗澹たる予感がよぎったりもする訳で。
どうしたらいいのかわからないけど考える前に何かしなきゃな。

ふれあい動物園でO157か?

秋田県健康推進課によると、大人と子供計17人にO157感染が判明。大半がゴールデンウィーク中に秋田県横手市にある「秋田ふるさと村」のミニ動物園を訪れ、ブタや羊などの赤ちゃんに触っていた。

とのこと。(yahoo!ニュース・読売新聞より要約。詳細というかおおもと


手洗いの指導はいかようであったのかが気になります。
過去もお子様が爬虫類からサルモネラ*1感染したため文部科学省が爬虫類ジェノサイドやむなしという通達を出したりもしたんですが、まず手洗い指導だろうと。

上野動物園ではこないだこども動物園で手洗いキャンペーンをしておりました。

協賛の花王、うまいとこ目つけたなとちょっとニヤリとしましたが。

手洗いのガイドラインこちら(仁義なき食品衛生…ココ好きなんだよなあ)

*1:なんでタイトルが野兎病なんだ(笑)←今見たらなおってますね@7/9

「顔の見える農業」がいつもニガテだ。

農作物を供給してもらっている上、住所やら名前やら家族構成にいたるまで公開させていると思うといたたまれない。
写真(その作物を手に、畑をバックに。傍らには家族)なんか貼ってあった日には、自分の、消費者としての加害者性が彼の目に見透かされてしまうようでとても直視できない。
こちらは顔の見えない消費者であるという不均衡さが落ち着かない。
顔を見せる農家の、顔を見せない農家への排他性が感じられる気がする。

そしていつも、落ち着きを少しなくし、ごめんなさいと謝ってその場を去るのだ。


ただ、それとは別に。


顔が見えないのが不安だなんて思ったことない。
そもそも自分の仕事だって顔を出すことはない。だからって別に手を抜かない。
むしろ手を抜くのなら他の理由からだと思う。例えば、自分の仕事の波及する「顔の見えない」人たちへの絶対的な想像力の欠如。

仕事の尺度というのは、それに顔を出せるか出せないかとは別のものだと思う。顔を出すのは目的であるべきではないのだし。
大事なのは自分から顔の見えない人に対する想像力とオマージュとかそこらへんじゃないかな。


自分の仕事が、一度も会う事のないだろう人から「おっ」と思われていたらいいなと思うのと同じ気持ちで、中国の、ブラジルの、アメリカの、国内の、自分の人生で一度もあいまみえることのないだろう、農家のおじさんおばさんに祝福あれと願う。


そして「顔の見えない農業」に安心が宿らんことを。

見知らぬ人に涙を流す以上の敬意はない

オンライン書店ビーケーワン:あらゆる名前「あらゆる名前」 Jose Saramago, 星野祐子訳、彩流社

牛乳は危険なのか

渡辺宏氏のメルマガ経由で、毎日新聞北海道版にて以下の「知っておきたい「牛乳有害説」 胃相・腸相が悪くなる」と題する記事が掲載されたようです。山田寿彦氏の署名記事。
MSN-Mainichi

 「病気にならない生き方」(サンマーク出版)は現在65万部のベストセラー。「胃腸は語る」(弘文堂)は98年の刊行以来11万部。著者は米国アルバート・アインシュタイン医科大外科教授で胃腸内視鏡外科医の新谷弘実氏。30万例の胃腸を診察した目で数々の“健康の常識”を覆す。その一つが牛乳神話だ。

 大部分の人の胃相・腸相は「牛乳を飲むことによって悪くなり、難病ともいえる悪性炎症性の大腸炎もできる」。牛乳が子供たちのアレルギー体質を作ることや、飲み過ぎが骨粗しょう症を招く危険性も紹介している。

新谷氏、寡聞にして存じあげていなかったので検索してみます。
まず大学・公立研究機関の付属図書館を中心とした蔵書検索サービスwebcatで著者名="新谷弘実"を検索。ヒット3冊。
3冊のうち、レシピ本のみ医療系(東京医療保健大学鈴鹿医療科学大学)2大学図書館に在庫あり。
大腸がんの権威と自称するにはあんまりにもあんまりではないか?

一応medlineでも"Shinya H"で著者検索してみたら、内視鏡関連は結構ヒットするので、少なくとも「内視鏡のひと」ではあるようですが、「大腸がんの権威」かどうかはわかりません。
J Dream Petitで検索したら、「大腸内視鏡検査法の実際 」という解説記事が一本。お仕事は海外メインのご様子。

新谷氏公式サイト*1によると、1969年に内視鏡でのポリープ切除術を"世界初"で行ってから、10万例を合併症なしに行ったそう。

単純計算で100,000÷(2006-1969)=100,000÷37=2,702.7例/year。
休日なしとして365で割ってみると7.4例/day。
あとそれに+で3倍の診察。
内視鏡検査をするというのは医者側にどの程度の時間を要求するものなのかは偉い人に教えてもらうとして、とりあえず多すぎやしませんか。
「行う」という日本語はオペ中に顔出しただけというのは含まないはず…ですよね?その忙しいお仕事の合間に書かれた本なら下調べなんてできないだろうと思うのですが。ましてその患者さんの病態を、アメリカの食生活に起因する部分を除いて、牛乳による影響だけを取り出すのはヒアリング調査や統計解析など相当の手間を要すると思います。アメリカの食生活(とりあえず食べすぎ)を鑑みれば専門の疫学者を使っても牛乳の害の証明は難しいかと。

そして何より、主張された言説を盲信して(そもそも学説なのかどうかの判断もせず)批判もなしにそれを公衆に垂れ流ししてしまった山田寿彦氏に対して批判が寄せられるべきでしょう。*2
最初にあげた「牛乳有害説」の山田氏の記事中に以下の記述があります。

牛乳有害説の評価について「それは内閣府食品安全委員会の所管」(生活習慣病対策室)との回答だった。食品安全委員会は「厚生労働省から特に要請がないのでそのような審議はしていない。見解もない」(事務局)。典型的なたらい回し。行政も牛乳批判を無視・黙殺していることが理解できた。

牛乳有害説なんて批判ですらないし(難癖?)、客観的データがないのに審議なんかしてたら税金の無駄だと思う。もし客観的な根拠となるデータをどこぞの方が揃えて提出すれば学校給食に採用されている食材だけにすぐに審議してくれるだろうことを食品安全委員会の中の人の名誉のために書いておきたいと思います。黙殺とか言われているのはあんまりだよ。

記事下にあるリンクで、別の記事「食の危険性を指摘 漫画でやさしく解説する本:MSN-Mainichi」があがっているが、こちらもなんだか、という記事。

「牛乳はモー毒?」。「牛乳はカルシウムをたっぷり含んだ健康食品」という神話のうそを暴く。世界で牛乳を飲む国では骨粗しょう症患者が多い。

「牛乳を飲む国」という大雑把なくくりには目をつぶるとして、骨粗しょう症が多いからみなさんカルシウム摂ろうと牛乳を飲む可能性を考えられたりとかはないのでしょうか?

日本では牛乳の普及に伴い、生活習慣病が増えた。

変数Aと変数Bに相関関係が見られたところで因果関係と断定はできないのは統計解析の基本中の基本では⇒「社会調査」のウソ参照されたし。
たぶん相関で言うなら牛乳の普及に伴い寿命が延びてもいるんじゃないかと思いますが(笑) 最近牛乳の消費が低迷してるけど生活習慣病は変わらず伸びてませんでしたっけ?
どうも毎日新聞北海道支社報道部さんでは「いただきますからはじめよう─みんなの食育講座」という本を出されているようで、よくある食育原理主義*3に感化された構図が見えてくるのですが。

で、その本を調べていたら第11回ホクレン夢大賞 農業応援部門 優秀賞にあがっていました。
ホクレンさん、生産管理面での自業自得な部分もありますが牛乳がだぶついて生乳の産業廃棄物処理についてというお達しが出るほど生産者にとっては辛い時代ですけど、こういう愚説を垂れ流すメディアに賞を与えてる場合じゃなくってそろそろ本気で闘ってみないといけないんじゃないでしょうか、とヨソモノは思うのですが。

いつも思うのですが、食べ物関係の会社・業界団体って強気な対外交渉をされないですよね。日本図書館協会なんかテレ朝のドラマの1シーンに対してでも図書館は読書の秘密を守ることについて(ご理解の要請)という声明を出すほどうるさいのに^^; 
…そうか、あんまり強気に出ると消費者サマから嫌われるからか。




なお、このエントリは牛乳を飲みながら書き込まれました。
クレバーな皆様はもっと牛乳を飲みましょう。

*1:http://www.drshinya.com/http://www.drshinya.com/rules.htmlで本来自由であるリンク(詳しくは東北大の後藤さんのとこ参照)に条件付けをしているのでそれを遺憾ながら仕方なく尊重いたします。ただし、リンクされることについて「尚、当社の趣旨に合わない場合や当社の事業や信用を害する恐れがある場合は、リンク自体をお断りいたします。」と書いておきながら自分のリンクに関しては「当サイトからリンクを張っている当サイト以外のウェブサイトは、それぞれの法人又は個人の責任において管理・運営されており、当社の管理下にあるものではありません。当社は、リンク先のウェブサイトの内容について、また、お客様がリンク先のウェブサイトをご利用になったことにより生じたいかなる損害についても一切責任を負うものではありません。」と仰るのはいかがなものか。まあ後ろのは当たり前なんだけど、だからこそ前半がおかしいんちゃうの?と思わないのでしょうか。

*2:だってオカシな人はいつでもどこでもどんな業界にもいるのだから

*3:メジャーメーカーは利益追求の越後屋ばりの悪者、行政はお代官さまで良くて無能悪くて金持ちの味方、それに対して質素で自然でLOHASでオーガニックで未精製でネイティブなものは良い、外国人も質素で自然でLOHA(略)な味方以外は悪者だから輸入食品は信用しない、トキシコロジーなんてわからないけどカタカナ物質は知っている単語以外猛毒、精製物も化学物質だから当然毒、世の中の悪いことは全て食生活の乱れが原因、タバコはなぜかあまり批判しない、食べ物でも微生物性食中毒に関して全く無関心、寿命が延びたのには目をつぶって色んな病気を食べ物のせいにするetcな香ばしい皆様